
■ SPLYZA Motion 導入前の課題
以前は、無料で利用できる動作解析ソフトを使用していました。しかし、これらは基本的に2次元の座標データしか扱えず、3次元的な動作解析を行うには限界がありました。特に困っていたのは、「手間」と「精度の低さ」です。2次元の動画データから座標を手動で計算・補正する必要があり、解析に膨大な時間がかかっていました。
■ SPLYZA Motion 導入の決め手
最大の決め手は、「マーカーレスで、スマホだけで計測が完結する」という点です。大学の研究室には高価な機材がありますが、臨床現場のスタッフが病院で使うには、専門的な機材や身体へのマーカー貼付はハードルが高すぎます。その点、SPLYZA
Motionはスマホで撮影するだけで、すぐにグラフが表示され、現場のスタッフが直感的に使える点が魅力的でした。
また、私がこれまで専門的な3次元動作解析装置で行っていたのと同様に、「Excelでのデータ処理・出力が可能であること」も重要でした。位置変化や関節角度などのデータがCSVで書き出せるため、これまでの研究手法(Excelでの二次加工など)をそのまま応用できると判断しました。数百万円する専用機材と比較して、サブスクリプション形式で安価に導入できる点も、予算の限られる現場導入の大きな後押しとなりました。
■ SPLYZA Motion 実際の活用方法 / 活用シーン
主に研究用途として、脳卒中片麻痺患者さんの動作分析に活用しています。具体的には、特定の介入(振動刺激の有無、杖や装具の種類の変更など)を行った際に、動作がどう変化するかを経時的に計測しています。
・前額面(正面): 股関節の内転角度、脊柱の側屈角度
・矢状面(側面): 股関節・膝の屈伸角度、体幹の屈伸角度、角速度
これらを指標として分析を行っていて、現在は主に関節角度と角速度を中心に見ています。また、大学にある大型機材を持ち運べない外部(スポーツ現場や高校など)での計測ツールとしても重宝しています。
■ SPLYZA Motion 導入後の変化
臨床現場の先生方から「感覚的に捉えていた変化を、数値で証明できるようになった」と非常に喜ばれています。これまでは「なんとなく体幹が曲がっている」「動きが良くなった」という臨床家の直感(肌感覚)に頼る部分が大きかったのですが、それをグラフや数値として客観的に示せるようになりました。
歩行速度だけでなく、動作の「質」を評価できるようになったことは大きな変化です。また、手動で解析していた頃に比べて、圧倒的に時間短縮ができ、研究や症例発表の準備がスムーズになりました。

周波数の異なる振動刺激が片麻痺患者の起立動作に与える効果
◯長田 悠路1), 池内 潤2), 榎本 昌賢2), 天羽 飛翔2)
1) 徳島文理大学, 2) 田岡病院 徳島県理学療法学会 (2025)
*SPLTZA Motion2Dモード
■ 今後の展望
今後は、地域の高校との連携(探究活動)や、スポーツチームへのサポートにも活用範囲を広げていく計画です。高校生との探究活動では、難しい物理計算などがわからなくても、SPLYZA
Motionを使えば自分たちの体の動きが可視化できるため、生徒たちも興味を持って取り組んでくれています。
また、機能面への要望としては、計測データから「立ち上がり」や「歩行周期」などの特定の局面(フェーズ)を自動で切り出し、その区間の最大値・最小値・平均値をパッと出せる機能が強化されると、さらに解析が楽になると期待しています。