
岡山県倉敷市で急性期から回復期、在宅まで一貫したリハビリテーション医療を提供する倉敷平成病院。同院では、リハビリの効果を客観的に評価し、患者様へのフィードバックやスタッフ間の議論、さらには臨床研究に役立てるため、マーカーレス3D動作解析アプリ「SPLYZA
Motion」を導入いただいています。
今回は、リハビリテーション部に所属される理学療法士の山﨑諒様に、導入の経緯から具体的な活用シーン、そして導入後の効果について詳しくお話を伺いました。
(インタビューは2025年10月24日にオンラインにて実施)
■ SPLYZA Motion 導入前の課題
▶︎「リハビリの効果」を客観的・定量的に記録する必要性
元々、上司から「リハビリテーションや治療の効果を、客観的かつ定量的に残していく必要がある」という方針が示され、そのためのツール導入を検討し始めたのがきっかけです。
日々の臨床現場では、どうしても理学療法士の「観察評価」に依存する部分が多くなります。もちろんそれも重要ですが、そこを客観的なデータで補い、なおかつそのデータを蓄積していくことで、将来的な臨床研究にも繋げていきたいという思いがありました。
幸い、私自身が吉備国際大学との共同研究に携わらせていただく中でSPLYZA
Motionを先行して使用しており、その特徴をある程度把握していました。また、上司もアプリの存在を知っていたため、「あれはどうか」と話が上がりました。
■ SPLYZA Motion 導入の決め手
▶︎圧倒的な「測定の簡便性」。臨床現場で使える手軽さと正確性
導入の決め手は、圧倒的な「測定の簡便性」です。
いわゆる従来のマーカーベースのモーションキャプチャーは、当院に設備がないのはもちろん、設備がある機関の方が珍しいでしょう。仮にあったとしても、測定にかかる時間や様々な要因を考えると、臨床現場で現実的にデータを取得し続けるのはかなり難しいと感じていました。
我々が求めていたのは、「手軽に、ある程度の正確性をもって動作を捉えられる」ことでした。SPLYZA Motionはそれが可能だと判断し、導入を決定しました。
■ SPLYZA Motion 実際の活用方法 / 活用シーン
▶︎装具選定から術前後の比較、介護領域まで幅広く活用
現在は、非常に幅広いシーンで活用しています。
1. 装具の選定・調整
下半身に麻痺がある患者様の装具を選定する際、細かな条件の調整(例:靴の高さの調整)が動作にどう影響するかを判断するために使用します。関節の細かな動きや姿勢の変化を緻密にチェックできるため、その方にとってより良い条件を見つけるのに役立っています。
2. 手術前後の動作比較
当院が力を入れているパーキンソン病のDBS(脳深部刺激療法)という外科治療や、人工関節の手術において、治療の前後で動作がどのように変化したかを評価しています。
3. 介護領域(通所リハビリ等)でのフィードバック
介護領域でも、利用者様の姿勢や運動機能の変化を「見える化」するために使用しています。例えば、通所リハビリで「先週来た時と比べて、立っている姿勢がどう変わったか」をご本人やご家族に分かりやすくフィードバックするために活用しています。
4. 表面筋電図との併用
筋肉の活動を測る表面筋電図とSPLYZA Motionを組み合わせて使用することもあります。動作(運動学)と筋活動の両面から関連性を分析し、より良いリハビリのアプローチを検討するために用いています。

(左)撮影風景 / (右)アプリ画面のスクリーンショット
■ SPLYZA Motion 導入後の効果
▶︎客観的データが、スタッフ間の議論と患者様の実感を深める
導入後のポジティブな効果は大きく3点あります。
1. 2画面比較による詳細な分析
特に活用しているのが、2画面での比較機能です。治療前後や条件の異なる動作を、タイミングを同期させて並べて分析できるため、小さな関節の動きの変化も非常に分かりやすくなりました。これにより、客観的データに基づいて、治療効果判定や、より細かな補装具の調整・検討がしやすくなったと感じています。
2. データに基づくスタッフ間の議論
以前は「なんとなく良くなった」という観察結果に頼りがちだった議論が、データに基づいて「この患者さんにとってどのアプローチが良いか」を議論できるようになりました。客観的に患者様の状況を共有できるようになったのは大きな進歩です。
3. 患者様自身への「実感」の提供
その場で解析結果をタブレットでお見せできるため、患者様と一緒に供覧しながら「前に比べてこの辺りが良くなっていますね」とお伝えしています。
ご自身では変化を実感しにくい患者様も多いのですが、実際の動画とデータで比較することで違いが明確になり、「治療をやって良かった」と効果を実感していただく手助けになっています。
また、臨床現場ならではの利点として、解析対象を選択できる機能も非常に助かっています。
当院には専用の測定スペースはなく、また、疾患の影響などにより、ギリギリの状態で立ったり歩いたりされる患者様も多いため、安全のためにスタッフがすぐ近くに付き添う必要があります。その際、スタッフが近くに映り込んでも、患者様だけを選択して解析できるこの機能は、安全と評価を両立させる上で役立っています。
■ 今後の利用についての展望
▶︎さらなる機能への期待と、院内での活用促進
機能面では、今後3D解析モードでも2画面比較ができるようになるとさらに助かると感じています。特に歩行評価では横からの情報も重要になるため、3Dでの比較表示に期待しています。
また、解析結果を一覧で確認できるような、患者様にお渡しできる簡便な「レポート機能」があると、より患者様に還元しやすくなると思います。
院内の課題としては、まだ「そういうものがあるらしい」という段階のスタッフも多いため、今後は研修などを通じて、SPLYZA Motionを使える職員を徐々に増やしていきたいと考えています。
*本記事で紹介しているSPLYZA Motionの機能は、2025年10月時点のものです。アプリの最新バージョンとは仕様が異なる場合があります。